suzusan インタビュー
春夏コレクションと今後の展望
2020年5月21日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

今回は愛知県名古屋市の有松・鳴海地域で400年以上にわたって受け継がれてきた『有松鳴海絞り』をモダンに転換した『suzusan』

『有松鳴海絞り』を受け継ぐ鈴三商店の5代目として生まれた村瀬弘行(むらせ・ひろゆき)氏が、ドイツで新たに起業して伝統のプロダクトを独自の視点でアレンジ。

第2回の今回は創作の手法や素材との関係、こだわりについてお話していただきました。

村瀬 弘行

ドイツ・デュッセルドルフを拠点に、愛知県名古屋市の有松・鳴海地域で400年以上にわたって受け継がれてきた『有松鳴海絞り』の伝統技法を、鈴三商店の5代目として生まれた村瀬弘行(むらせ・ひろゆき)氏が再解釈してアレンジ。

『有松鳴海絞り』の伝統と現代的な要素を掛け合わせたコレクションを発表しています。

 


 

ANNASTESIA NAGOYAを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。

舞台や広告カメラマンの経験を経て2019年3月に入社した専属フォトグラファー。

 


 

"日々の生活の中で自分のための時間を作ることの重要性を感じたことが春夏コレクションの始まりでした"

20SSのテーマは"Beach" 友人がバケーションに行った先での生活を想像したところがスタートになっている。

リラックスした時間とそのときの生活を想像するところが創作のスタートに。

---春夏コレクションのテーマを『Beach』に設定した理由はなんだったのでしょうか?

これは自分が感じていたことなんですけど、少し都会に飽きているというか、日々の生活の中で自分のための時間を作ることの重要性を感じたことが始まりでした。

僕にはギリシャ人の知人がいて、ロンドンで仕事をしているんですが、バケーションのタイミングでギリシャに戻って家族や友人と過ごしてリフレッシュして戻ってくるっていう流れがすごく好きだったので、 そういう時にどういう生活してるんだろうというところが今回のテーマの元になっています。

今期は様々な"青"を使った作品が目をひく。深い青から薄めまで様々な色合いの"青"が並ぶ。

鮮やかで豊かな色彩を多角的な好みに合わせて作り上げる。

---コレクションのキーカラーは青になるんですか?

今回は深い青から薄めまで、いい意味で絞りっぽくないシーズンになったかなと思っています。

以前まではあえてトーンを落としてクラフト感を出していたんですけど、今回それを軽いトーンにしてエフォートレスな感じで着てもらいたいというのがあったので、カラーも意識的に軽く、薄くさせています。

---それ以外にもカラーは豊富ですよね。

自分たちの商品を取り扱っているショップは多様性があるので、その人たちが共通して好きなものを落とし込まないといけないので、どこか特定のところにだけ特徴を持たせるというより、コレクション全体としてのバランスは重視しています。

カラーに限らずですが、多面的でありたいと常々思っているんです。

やっぱり伝統とか手仕事とか、そういう側面だけで見られることはそれだけじゃないっていう思いがあるので。

新作の一部。
春夏らしい軽快さと清涼感が感じられるカラーを用いている。

着心地も雰囲気もエフォートレスなモノを。

---使ってる生地で新しく取り入れたものはありますか?

カットソーで使っている生地は開発に20年くらいかかっていて本当に日本の技術力が集まった良い素材です。

これはダブルガーゼになっていて、本当に肌触りがよくて 赤ちゃんや肌アレルギーがある方でも着ていただけるようになっています。

Tシャツで軽いと感じるくらい着心地が良くて、 パリ展示会での反応もすごく良かったですし、僕の中でも今期の象徴的な素材の一つです。

それと和紙の素材を使ったニットです。

原料になるマニラ麻の成長がすごく早くて環境に優しいこと、 吸水性も良くて、皮膚が呼吸してるような感じで。

原料が植物由来なので、最終的に土に還るというのも面白いなと思って使いました。

これに関しては染め方もこだわっていて、「草木染め」という名前を作った、天然染色の祖とも言える山崎家の3代目の山崎一樹さんに染色していただいています。

和紙素材のプルオーバーニットトップス
グレーは通常では墨の原料に使われる松煙(しょうえん)と呼ばれる松の木を炭にしたものを用いて染められている。

視点を変えた着眼点からアイディアが広がっていった。

---メンス、レディースでデザインの面での違いはありますか?

今季は特にそうなんですけど、suzusanというブランドはユニセックスブランドというふうに捉えているので。

ファッションの流れとしても性別の壁はどんどんなくなってきていますし、いろんな体系や人種、性別関係なく着てもらえるものを意識しています。

今は比率としてはレディースの商品が少し多いですが、今後はユニセックスブランドとして展開していきたいと考えています。

今シーズンはある意味、その先駆けというか、そういう位置づけのコレクションになります。

---スタイルとしてはどういう提案をされていますか?

スタイル提案は特になくて、本当に個々で自由に楽しんでもらえたらいいなと思っています。

自分たちの作品を気に入ってくれる誰かの為に作って、その人に使ってもらって、その人が使っているところを見るとまた創作の活力が湧いてきて、というのを繰り返して10年経ったっていうのもありました。

続けていく中で大変な時もありますけど、でも誰か自分の作品を使ってくれたりとかしているのを見るとよかったと思います。

好きなアイテムを着ることで気分が上がったり、楽しい気分になってくれたらそれが一番嬉しいことですし、ファッション本来の楽しみ方だと思うので。

ランダムにまとめた布を糸で巻いていく技法を用いて染色されたマダラ絞りのスプリングコート。
コレクションにはなかった無地をBlack / Natural Whiteで製作していただいた。

--ブランドの今後の展開についてはどのようにお考えですか?

元々このブランドを始めたきっかけはこの産業を再興させたいという気持ちからなので、自分がやっているうちはやりたいことを続けていくつもりですが、 いつか私が死んだとしても、次の世代の人たちがその時代にあったやり方や新しいアイディアを生み出して、次に繋がっていけばいいなと思います。

有松で生まれた素晴らしい文化を後世に残していく中で、このブランドが50年後、100年後にその文化の一つとして残っていくことが望みですし、いつか次の世代に託すことができたらいいなと思っています。

---次の世代に伝統を繋いでいくだけでなく、進化させていってほしいと。

今までsuzusanを海外で販売してきて、この有松絞りには人を引き付ける魅力や、それができる大きなポテンシャルがあると感じています。

今は有松に海外からインターンで来ている方もいますし、今までのようにこの地区だけで受け継いでいくとか、日本人だけがやるとかそういった時代ではないのかなと考えています。

そういう意味では時代に即した柔軟性が必要ですし、ものを作ることだけでなく、ものづくりを教えることを柔軟に捉えられるような土台作りをして、次の世代に繋いでいけたらと思います。