INNOCENCE NY デザイナーインタビュー
2021年00月00日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

今回はニューヨークを拠点にヴィンテージを用いたリメイク作品を製作するinnocence NY。

日本の伝統的な手作業である「刺し子」や和柄を取り入れ、独自の視点と発想でカスタマイズした作品作りが特徴のブランドです。

今回はデザイナーにリモートでお話を伺いました。

INNOCENCE NY

ニューヨークを拠点とする「イノセンス ニューヨーク - INNOCENCE NY」

古着のバイイングや世界各国との取引実績を持ち、 ヴィンテージウェアをこよなく愛するNY在住のデザイナー自身がヴィンテージアイテムからインスパイアされた物を製作。

第一弾は厳されたヴィンテージアイテムを独創的にカスタマイズした一点物のリメイクライン。

 


 

ANNASTESIA NAGOYAを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。

舞台や広告カメラマンの経験を経て入社した専属フォトグラファー。

 


 

ヴィンテージをベースに、ステッチ、刺し子、パッチワーク、ダメージ加工など様々な手が加えられている。

--- 現在ニューヨークで作品制作をされているとのことですが、生まれや育ちは日本ですか?

そうです。
北海道で生まれて、その後ニュージランド、カナダ、ニューヨークで育ちました。

--- ニューヨークに渡ろうと思ったのはいつ頃からでしょうか?

もともとヒップホップが好きで中学1年生ごろからニューヨークには憧れを持っていて、ファッションに関する様々なカルチャーがあることに魅力を感じていました。
世界各地で生活してきましたが憧れはずっと消えてなくて、当時カナダに住んでいて距離的に近い事もあり、「行くなら今だ」と思って単身でニューヨークに移住しました。

--- ニューヨークでやりたかったことはやはりファッション関係の仕事ですか?

ずっと憧れていた街で自分が好きなモノに携わる仕事がしたくて、ファッション関係の仕事を探していました。
最初は新品の商品の買い付け、それを日本のお店に卸す仕事をしていました。
今もブランドの他に古着の卸業者等もやっています。

---実際にニューヨークで生活してみて、どんなところが好きですか?

これは実際に住んでみないとわからないかもしれませんが、ニューヨークは本当に自由です。

そこが大好きですね。
生活費は本当に高いですが、頑張ってそれを払ってでもここにいたいと思えるくらい特別な時間をくれる街です。

©️ Ginen 2015

--- 作品を作り始めたそもそものきっかけはなんだったのでしょうか?

買い付けする際に色々な古着のパンツを見るのですが、どうしたら今っぽく自分のスタイルにハマるかな?と考えた時に、とりあえずサンプルとしてリメイク作品を作ってみたのがきっかけでした。

服作りの知識はあまり自信がなかったのですが、いろんなブランドに携わってアドバイザーみたいなこともやった経験もあり、基礎的な知識はあったので最初は自分のためになんとなく作ってみた感じでしたね。

--- そこからブランドを立ち上げるに至ったのはなにがきっかけだったのですか?

正直なところ、ブランドを立ち上げる予定は全く無かったんです。
最初は何人かの友人にパンツを作ってくれと頼まれてプレセントしたんですが、思いの外周りからの評判が良くて、そのうちの一人の友人が気に入ってくれて「これをきっかけにブランドを始めた方がいいよ」とおすすめされたからです。

--- それからすぐにブランドを立ち上げたのですか?

そうですね。
実は勧めてくれた友人も自分のブランドをやっていて、そことコラボレーションという形で1ヶ月後にポップアップイベントで初めて作品を発表しました。

--- 最初に作ったのはどんな作品だったのでしょうか?

最初に作ったのは現在も販売してるリメイクパンツたちです!

ブランド設立のきっかけとなったリメイクパンツ。

--- 「INNOCENCE NY」というブランド名にはどんな由来と意味があるのでしょうか?

ブランドネームは僕自身が無邪気で単純な性格なので「イノセンス」にしました。
ニューヨーク発信なので「NY」合わせてイノセンスNYです。
これはすぐ決まりました。

--- ロゴのキャラクターもご自身で考案して描かれたのですか?

そうです。
このキャラクターは自分自身の少年時代をイメージしています。
発達障害の少年時代で薬を飲まされ具合が悪く目の下にクマがあります。笑

もう1つの意味は洋服が大好きで中毒という意味です。
僕自身朝から晩まで服のことを調べるくらい好きなので洋服中毒という意味もあります。笑

デザイナー自らが考案したロゴ。キャラクターは自身の幼少期がモチーフに。

--- 作品作りにおいて、ご自身やブランドとしてのこだわっているはどんなところですか?

作品を作っていて意識している事は、1本1本違うスタイルにしようと思っています。

僕自身、人と服がかぶるのが嫌いなので、形が同じでも表情は違うことを意識しています。

--- 「人と服がかぶるのが嫌い」とおっしゃいましたが、その考えはそのままブランドの創作哲学になっているのでしょうか?

そうですね!

特にニューヨークに住んでいるとファッションに対して敏感な人がたくさんいて、被る機会が本当に多いんです。
「今それを着ていたら間違いないよね」っていうアイテムって、いつの時代にも少なからずあると思うんですよ。
今だったらクロムハーツのデニムでクロスの色のパッチがレアカラーとか、Denim terasのデニムとかそうですよね。

---「表情やスタイルに違いを出すこと」について、ベースのアイテムの雰囲気を崩さずに作るのではなく、そういうことを意識せずに自由な発想で製作するのでしょうか?

完全に発想を重視していますね。
一番最初はヴィンテージのパンツをピックしてこの表のカラーとダメージ具合にはこのカラーの刺繍や刺し子が合いそうだなと考えて作ってます。

フィーリングを重視して自由に創作していく。出来上がる作品は一つ一つが完全な一点物。

---デザインを考えるにあたって、インスピレーションを受けたものはありますか?

影響を受けたのはニューヨークのカルチャー、ヴィンテージアイテム、それに音楽が大きいです。
ヴィンテージのアイテムは仕事の中で触れる機会が多いので、無意識のうちに影響は受けていると思います。
あとは色々なジャンルの音楽を聞きます。
その時代によって服のスタイルとかも違ったりしてすごく影響受けています。

--- 店頭でもイノセンスNYを好んで着用されている方はヒップホップやロックを聞かれる方が多いです。具体的にはどんな音楽ですか?

ヒップホップからゲームのサウンド音楽、クラシック、日本のロックもEDMも聴きます。本当に音楽が大好きで1日中、どこ行くのにも欠かせないですね。
例えば朝はEDM、昼間はロック、ふとした瞬間に好きだったゲームのサウンドとか、寝る前はクラシックだったり、本当にその時の気分で色々と聴いています。

--- 音楽の中でも強く影響されているジャンルやアーティスト、あるいは好きな年代はいつですか?

もっとも影響されたのはニューヨークのアーティストが多いですね。
beasty boysもRUNDMC、ナズとかEPMD...数えたらもうキリがないくらいですが、80年代後半から2000年台のニューヨークの音楽はかなり聴きました。
中でも90年代が特に大好きでローリンヒル、アリーヤ、モニカ、ウータンクラウンとかですね。

その当時のアーティストたちが着用していた洋服や着こなし方、サイズ感や色合わせをみてパンツのステッチ配色なんかを決めることもあります。

デザインは当時のアーティストの着こなしなどから影響を受けることも。

--- 刺し子などの手作業を作品に取り入れているのには、どんな理由があるのでしょうか?

刺し子で作品の表情が変わるからです。
ミシンはサイズ直しやステッチなどで使用しています。
パンツの色などに合わせてその時々で組み合わせして形を作っていく感じですね。

--- 手作業の行程は作品の表情にどんな変化を加えてくれると感じていますか?

感覚的な表現になってしまうんですが、アクセントと違いですね。
ベースのデザインは同じような感じだけど、よくみたら全然違う刺繍や刺し子をしています。

この違いが僕の中の被りたくないというところの考えがこもっています。

--- 刺し子もそうですが、パッチワークの和柄など、作品の中には日本の要素も散見されます。
そういうデザインの裏に、何か意味や意図を込めているのでしょうか?

これは僕自身が和柄が大好きだからですね。
小さな和柄の良さがなんかあるんですよね。あっここで和柄なんだ、、て感じです。笑
なんというか...意外性ですかね。

よく古着でも和柄を見る機会があるんですが、その中で「この柄ならこのパンツに相性がいいな」とか、外しとして和柄は使用しています。
パンツに使うステッチも同じで、僕の作品はその時に「良いかも」と思った感覚でやっていますね。

刺し子で円を描いていく製作途中の作品。

アイテムとの相性を見ながら柄の組み合わせを行う。

---リメイクするアイテムの選定については基準で選んでるのでしょうか?

基本的にアメリカ産の商品状態を良いものを選んでいます。
生地が頑丈なのが良いんですよね。90年代の古着は。
そこから加工したりペイントしたり、わざとダメージを多くする事もあります。
基本的にはパンツの表情を見てここにはこれを入れてみようとかイメージでやってます。 あとは古着好きな方もアメカジやスニーカー好きにもハマるようにスリットとか入れてます。

--- 見つけた時に気分が上がる服はどんなものでしょうか?

ずっと探していた服を見つけた時ですね。
最近では90年台のAphex twinのオリジナルTシャツとか、映画のTシャツとかです。


--- ブランドは何人くらいのチームで製作していますか?
また、製作の過程で楽しいこと、もしくはどんなことが大変ですか?

基本的には僕とアシスタントの二人で作ってます。
作品作りは全部一発勝負でやっているので、大変なのはイメージした加工と違ったときですね。
ただ、逆にイメージと違った時の方が良い時もあったりして、それをプラスに利用しようと考えています。
楽しいことは作品を作っている時間と、自分の服を着て喜んでくれてる人がいることですね。


ずっと探していたという、90年台のAphex twinのオリジナルTシャツ。

--- 日本に比べてヴィンテージはどれくらい手に入れやすいですか?

モノによりますが、日本の方が安く手に入る場合もたくさんあります。
ただアメリカやその他の国には、日本には無いものが沢山あります。


--- 日本にないもの、というと、例えばどんなものでしょうか?

アメリカの田舎のフリーマーケットとかに行くと、日本では20万円するようなものすごくレアなムービーのシャツとかが3ドルで発売してたりしますね。
今はSNS上にいろんな情報がたくさんあって、すぐにその場にいる等な感覚が味わえますが、現地に足を運んでみないと味わえないような事がたくさんあって、 そういうモノを見つけた時やその場ではアメリカの文化の魅力を直に感じますし、日本ではあまり味わえない感覚かなと思います。

--- アメリカと日本では、ヴィンテージ(古着)に対する価値観の違いみたいなものはあるのでしょうか?

Tシャツではよくあるのですが、例えば日本のアニメ系のTシャツとかがアメリカでは高値で取引されたりしてますね。
例えばドラゴンボールGTのTシャツなんかだと日本の古着屋さんで5千円とかで売ってるものがアメリカでは400ドルとかしてたりして、しかも売れてるんですよね。
アメリカではそんな有名じゃないカメラマンが日本では人気があり売れたりとかもよくありますね。

自身もヴィンテージフリークというデザイナーのコレクション。

無数にあるアイテムの中から作品に用いるものを選んでいく。

--- 今後はどのような展開を考えていますか?

今後はオリジナル作品も作っていく予定です。
最初はやっぱりヴィンテージライクな商品が多いと思います。
ここであんまりいうと楽しみがなくなってしまうので、完成を楽しみにしておいてください!


--- 「INNOCENCE NY」あるいはご自身にとってリメイクとはどんなものですか?

一言で言うと個性ですかね。

自分が好きだなって思ったことを全力でやってる時はめちゃくちゃ楽しいです。
これは全てに共通しててゲームも音楽も映画も、夢中になる時が一番大好きですね。

だからリメイクしてる時も夢中になってるのが本当に楽しんでます。
夢中になっている時間が大好きなのでそれは本能で作品を作っています。

それが僕の個性かなと思っているので、やっぱり個性ですね。



21-22AW コレクション