DEVOA デザイナーインタビュー
2022-23AW(秋冬)コレクションについて
2022年08月04日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

今回はDEVOAの2022-23AW(秋冬)コレクションについて。

製作の過程や創作の裏話についてデザイナー、西田氏にお話を伺いました。

西田 大介

スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。

自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。

 


 

ANNASTESIA NAGOYAを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。

 


 

アトリエを移転してから初めて発表するコレクション。

--- コレクションについて聞く前に、今年の3月にアトリエを移転されましたね。
元々移転することを考えておられたのでしょうか?

アトリエの移転に関しては、元々以前のアトリエに移った際に10年後には移転する予定で考えていました。


今年で9年目となる頃に私が以前から考えていた場所の物件に空きが出たので申し込んで今に至ります。単純なタイミングという風に考えています。

---現在のアトリエにはどんな魅力があったのですか?

現在、使用させてもらっている物件は私が尊敬する日本の建築家:坂茂さんの設計です。


私は個人製作の美術作品に手漉き和紙を多く使いますが、この影響は写真家:グレゴリーコルベール氏と坂茂氏の影響です。


私が東京に出てきた当時にノマディック美術館という名で世界中で紙管やコンテナで会場を作り、写真は全て大きな手漉き和紙にプリントされていました。


その時の作品に大きく感銘を受け、会期中に何度も行った事を思い出します。


憧れたあの展覧会から14年後に坂茂氏の建築物件でお仕事をさせて頂ける事はとても運命的であり自分自身を鼓舞するには十分な影響だと考えました。

--- 新しいアトリエの働き心地はいかがですか?

新しいアトリエは以前の暗くコンクリートに囲まれた雰囲気のアトリエと全く逆の雰囲気で、大きな窓から見える景色は育った樹木の緑と自然光に囲まれ季節を感じながら毎日ゆったりとした気分で仕事をさせて頂いています。


ブランドは16年前から黒いモードな雰囲気からスタートしましたが16年の経過と共に私自身も年を重ねて好みの感覚やスタイリングの考え方に対しては少し変化がありました。


もちろん商品制作への情熱は変わらず、以前よりできる事などは増えて生地を含めた商品バランスに対しては以前より向上していると自負しております。


今後もより良い発展を目指して、自然に囲まれたこの場所でまた一歩ずつ精進します。

--- 22-23AWのルックもアトリエで撮影されていました。
今までになかった試みかと思いますが、今回なぜアトリエで撮影してみて感じたことはありますか?

特別な思いはありませんが撮影時期は荷物など完全に引っ越ししていない時期でしたので、荷物は殆ど無くより自然光が部屋に入ってきて私の当時の感情と重なった部分があり、弊社アトリエの階段での撮影に挑みました。


今までに無い狭い空間での撮影でしたが全て自然光での撮影となりそれなりに楽しめました。

天然素材と高機能素材。2つの素材の特徴を活かしたデザインを1つのスタイルにミックス。

--- では本題に入りまして...
22-23AWコレクション全体的な特徴について教えてください。

考え方的には大きくは変わっていませんが天然素材の良い部分が表現できるデザインと高機能素材が特徴とされるデザインをそれぞれ分けて考えました。


スタイリングについてはこれらをミックスして1つのスタイリングとして楽しんで頂けると嬉しいです。

今期、新しいパターンバランスに挑戦されたとのことですが、シルエット、サイズ感のバランスについてはどのように変化を加えたのでしょうか?

新しいパターンについてはDEVOAの特徴であるアナトミカルなパターンを以前と変わらないような考えで製作しながら、商品に対しての強い癖を削り落とす作業をしました。


特に若干ルーズフィットに製作しているアウター等は、立体的なパターンとゆとりがあるシンプルな考えで大きく思案した部分です。


大きく影響がある部分は、皮膚と生地の空間が開けば開くほどパターン自体は癖を強くしなければ見た目だけの独自の癖としての部分は消えてしまいます。


作業としては強い癖を消す考えではありますが、結果としては癖を強めたパターンになるという作業で色々と困惑しながらピンワークをしたことを思い出します。


DEVOAの立体パターンについては皺をコントロールする部分が大きく作用する為、フィット感についてのサイズ感を変える事はとても難しく感じました。


衿などの単純なデザイン以外の空間と建築的な部分で多くの時間を使う事が多かったと思います。

--- ルックでは大判のストールなどの小物を交えたレイヤードスタイルを提案されていました。
今回のルックのスタイリングのポイントはどんなところでしょうか?

レイヤードするスタイリングについては以前から大きくは変わらないと思いますが、22FWではコート等のアウター商品はサイズ感がゆったり作られた商品が多く登場します。


パンツはバリエーションが多くありますがインナーは肌に近づく程レギュラーフィットになり、以前のサイズ感よりレイヤードも多く楽しめると考えています。


制作者からの考えではありますが着用した際にルーズすぎず、ある程度の大人の余裕を感じるようなサイズ感を考えて製作しましたので、商品のサイズ感に合わせて選ぶ商品のサイズを変えないようにしていただきたいと私自身は考えています。

--- それぞれアイテムのシルエットごとにできる着こなしを楽しんでほしいということでしょうか?

コレクション自体の型数は多くないので、基本的にはどれを合わせてもそれなりのスタイリングは作れると考えていますが、私の提案としてはサイズ感を間違えず小物やインナー等を 使って”隙”を作る事だと思います。


着用者のイメージに合わせる事も重要ですが、普段使わない色合わせなど少しだけ挑戦しながら楽しんでほしいと個人的には考えています。

「常にパフォーマンスが高い仕事を」中には2年以上前から構想していた生地も。

次に素材についてお伺いします。22-23AWではどのような意図や考えを持って生地開発をされたのでしょうか?

通常の仕事として生地厚や季節などは関係なく沢山の生地を常に見たり制作を思案しています。


その中で単純に開発中の素材が今回のコレクションで発表になっただけの事で特に意図する事は自分の中ではありません。


SRYの生地と孟宗竹については2年以上前から構想していたので思案からやっと完成までにこぎつけた生地もあれば3~4か月で作った生地もあります。


上品さや高級感は全く意識していませんが高単価商品を製作する上で購入する側の気持ちになって常にパフォーマンスが高い仕事を心がけています。

--- 日本国内ではどんなアイディアを持って生地制作をしたのですか?

国内で制作した生地については、10年前から作っているニードルパンチを施した生地やシンプルに縮絨加工したウール素材等、素材に合わせてデザインを作りました。


特徴的な生地としてはSRYという編み機を使って製作した生地です。


こちらは布帛とニット(経編)を混ぜたような雰囲気の生地に仕上がります。


---SRYにはどんな特徴があるのでしょうか?

大きな特徴はニットの様に柔らかく自由な伸縮性があり、ニットの様に伸びすぎることは無く適度なハリを保つ事が出来ます。表・中間層・内側と3層構造で制作を依頼しました。


こちらの生地は表側をウール、中間層をポリエステルの綿状の糸、裏側を孟宗竹100%の糸を使って生地を構築しています。


この構造によって表と中間層で保温性を、内側の孟宗竹の効果で圧倒的な制電性を持った生地を作成できました。製作した商品はコートとジャケット、パンツに至りますがニットのような特徴と制電性を持ったDEVOAの中でも思い出に残る素材が出来たと思います。


何度も試編みをして頂いたり仕上げテストなどわがままな依頼に対しても真摯に協力して頂いた現場の生地制作者には感謝を送ります。

--- 他にはどんな生地がありますか?

もう一つ国内製作生地の中からは丹後地域で製作した生地も自分自身では特徴的な生地だと思います。


こちらの生地を思案するきっかけは15年前に私自身が作成した生地の風合いをとても気に入っており素材感が忘れられなく、もう一度製作したいと考え製作する事にしました。


自分で言うのはとても恥ずかしいのですが当時の生地は今でも全く遜色ない仕上がりの生地でした。


その生地について現在は糸の関係で同じ事を再現する事が出来ない時代になりました。


そこで当時の生地を基に近い糸の形状や仕上げなどをお願いして作成して頂きました。


以前の混率はシルクカシミヤだったのですが原料の高騰によりカシミヤを使うと生地代金が1mに対して3万円ぐらいになりそうでしたのでカシミヤの部分をハイブリッドウールというカシミヤに近い糸の細さのウール糸を使いました。


この糸はDEVOAでも以前から使用していてとても良い生地を演出してくれます。


ウールと言っても通常のウールより3倍ぐらいの値段はするのですが・・・

--- 織りの表情が見えつつ起毛感もあるという、複雑な表情をしていますね。

この生地は2種類の素材(ウール・絹)と3種類の糸の形状から成り立っています。


しかも2種類は糸から別注での製作になるのでコストに関しても今回のコレクションにおいて一番高価な生地に仕上がりました。


生地の出来上がりについては是非お客様に商品で確認して頂きたいのですが当時と同じではありませんが現在のDEVOAの生地製作の中で、どこに出しても恥ずかしくない生地に仕上がっていると思います。


糸の形状から今回再構築し、整理加工など生地製作者と思慮を重ねとても勉強になった事も沢山ありました。

イタリアではカシゴラを使った風合いのある生地を、スイスではEXISTらしい高機能素材を制作。

--- では、海外制作の生地にはどんな特徴があるのでしょうか?

イタリアのFaliero sartiではカシゴラ100%の糸を使った生地のコレクションを製作しました。


この生地製作についてはFaliero sarti側からの提案でカシゴラの糸を使って生地を作る提案をいただきました。


日本では現在この原料の流通は無く、私自身も初めて触る原料でしたのでとても楽しみに制作させていただきました。


制作については糸番手を聞いて製作したい組織を数種類オーダーし、試織と整理加工を数回やり直して3種類の生地を作成しました。


特に柔軟加工に対してのやり直しが多かったのですが、軽くて保温性の高い生地が完成しました。

--- 3種類のそれそれにはどんな特徴があるのでしょうか?

3種類の内、2種類はカシゴラ100%でアウター用の起毛した生地と素材の軽さを体感できる軽さに特化した生地を製作。


残り1種類はリネンと混ぜて表情を付けた生地を製作。


今回は糸から仕込みをしたので生地に対する商品単価はとても抑える事が出来たと思います。


商品単価自体は高いのですが、この品質においては他では出来ない価格になっていると思います。

--- DEVOA EXISTでは今回どんな機能を持った生地を用いたのですか?

スイスのSchoeller社ではEXIST用にドライスキンを中心とした生地を製作しています。


ドライスキンのタイプは耐摩擦性とストレッチ性に特徴があり、普段使いに対してのストレスが無く普段の生活に馴染む商品になると思います。


今回はEXISTでダウンジャケットを作成しました。


こちらは温度調節機能を持ったC-CHANGEの素材とストレッチ素材の2種類を使い作成しました。


ダウンにはマザーグースダウンを使っているのでフィルパワーはもとより保温性が高く、EXISTらしい高機能素材と合わさって冬には快適なアウターに仕上がっていると思います。

パターンを一新したパンツは新型のスケーターパンツに注目。

--- 今回のコレクションでは、パンツ全てのモデルでパターンを一新したとおっしゃっていました。
特に新型のスケーターパンツは、素材が違うだけでスラックスのような綺麗な印象だったり、カジュアル感が強かったりとガラッと印象が変わり新鮮なアイテムでした。

定番のスリムパンツなどのパターンなどの細かい修正や変更などを行いました。


サイズ感などについては変更していませんのでお客様にはいつものサイズで選んで頂けると思います。


新型のスケーターパンツについては単純に気分的なところから作成に至りました。


コレクションが全体的に綺麗な印象があったのでカジュアルな雰囲気とクラシックなスタイルを素材で遊べるようなデザインにしたかったのだと思います。


スタイリングとしてスポーツタイプではないクラシックなスニーカーとの相性もいいと思います。

--- シューズについてお伺いします。
22-23AWではブーツと短靴の2つのシューズが発表されました。
いずれも懐かしさを感じさせるソリッドなデザインでしたが、それぞれのデザインのポイントを教えてください。

今回は2型製作しました。両方共に手作りでありマッケイ製法です。


ブーツについては軽さを特徴とした内容で製作しています。


短靴はレザーソールでスリッポンの様な足入れのしやすさを考えゴム紐での脱着仕様にしています。

作品に落とし込んだ「大人の遊び」

--- 今期の一部の裏地には、イラストレーターの村田篤司氏のイラストがプリントされています。
コラボレーションするに至った経緯を教えてください。

イラストレーターである村田氏との出会いは私の友人よりご紹介いただきました。


その後に村田氏とお会いする機会があり、村田氏が私の作品を理解する事に多くの時間はかからず格闘技に興味がある事でよりお互いの視点を理解する後押しになりました。


私としては村田氏から学ぶ事ばかりなのですが、特に単純な事に対しての思慮と奥深さを一番教えて頂いたように思います。


彼に限らずアーティストとしての根本的な部分での話に私は多くの事を教えてもらいました。

--- コラボレーションするにあたり、どんなことを考えて制作しましたか?

コラボレーションについては最初のイメージはありましたが色々と相談するうちにDEVOAを考えてデザインするよりも私のイメージを壊す方が面白いのではないかと考えました。


村田氏が描いてくれた”女優柄”は沢山の本質を突いていてとても面白く、村田氏とのコラボレーションが無ければこの様な商品は完成しなかった事を考えれば紹介してくれた友人と村田氏には本当に感謝しています。


この大人の遊びをDEVOAの足跡に乗せる事が出来た事を嬉しく思います。



『格好良すぎるは格好良くない、格好悪いはもちろん格好悪い 可愛くし過ぎるのはDEVOAではない、全く可愛くないのは少しだけ寂しい。』



大人のスタイリングを踏まえた中に、少しの遊びという隙を理解し楽しんで頂けるお客様に届いてくれると嬉しいです。


村田さんに確認までは取っていませんが恐らく同じ考えではないかと思います。


・・・・・村田さんもこの考え方ですよね???

--- 今季のコレクションを通じて、DEVOAの作品を着る人に伝えたいことはありますか?

この文章を書いている今の時期は世界政治やCOVID-19を含め色々な事がまだ続いていますが落ち着くというより本意ではありませんがこれが日常になったと慣れてきた感じもあります。


この現状に対して影響がない人は殆どいないと思います。


私自身も沢山の壁がありますが、自分に一番影響がある事は自分で行動する事が一番の近道だと自覚しながら日々を楽しんで生活していきたいと思います。


今回も沢山の方々に支えられて今を生きている事に感謝をしながら、少しでもお客様の楽しい笑顔を想像して次に向かいたいと思います。


最後まで目を通していただきありがとうございました。


22-23AW(秋冬) コレクション

22-23AWコレクション ルック