DEVOA デザイナーインタビュー
2021-22AW(秋冬)コレクションについて
2021年7月8日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

今回はDEVOAの2021-22AW(秋冬)コレクションについて。

製作の過程や創作の裏話についてデザイナー、西田氏にお話を伺いました。

西田 大介

スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。

自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。

 


 

ANNASTESIA NAGOYAを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。

舞台や広告カメラマンの経験を経て入社した専属フォトグラファー。

 


 

21-22AWコレクションの公式ルックの一枚。ミリタリーテイストを織り交ぜたアイテムを独自のレイヤリングでまとめ上げるスタイリング。

--- 21-22秋冬コレクションの概要についてお聞かせください。

21-22FWコレクションではデザインとしてはミリタリーテイストを少し混ぜながらデザイン作業を始めました。
素材開発においては全てではありませんがデザインする半年前から生地の制作を始めており、今回のコレクションに間に合った生地やタイミングが合う生地が綺麗な雰囲気の素材使いが多くなった事と、色や素材感が今回のイメージを形成したと思っています。
パターンバランスを多少変更した事も大きな要因だと思います。

---今回のコレクションでも様々な生地を製作していますが、生地の特徴をどのようにデザインに落とし込んだのでしょうか?

生地とデザインの関係性については言葉で表すことはとても難しいです。

セオリー通りの事もありますし、セオリーから外して試したい事も沢山あります。
考えていることは生地の厚みと柔らかさ程度で、その他は生地上がりの瞬間的な雰囲気や、時間が経って考え直す事も含めて感覚で動いていることが多いからです。
感覚で動いている内容も多岐にわたり文面にするにはとても難しいです。

--- 今回のコレクションで使用している生地の特徴や、製作途中でのストーリー等はございますか?

2021FWコレクションの生地の特徴としては個人的にはどれも思い入れがあるので、1つが大きく目立つことは無いのですがそれぞれが原料(糸)に拘って制作した商品だと思います。
継続しているイタリア・Faliero Sarti(ファリエロサルティ)社でのヴァージンウール、特にそのヴァージンウールとイタリア特有のカナパ素材をミックスさせてヴィンテージの雰囲気を作ったチェック柄生地、 ストラクチャーウールと呼ぶ高品質の糸によるギャバ素材。

国内では京都・丹後織物産地によるシルクをふんだんに使ったジャカード・ツィード素材は2021FWコレクションを代表する素材に仕上がっていると思います。
それぞれがとても高価な生地なりますが他では多くは見られない素材となっていると思います。

国内外で製作したファブリックを様々な形でデザインに落とし込んでいく。

--- 今回のコレクションで以前から継続して取り組んだ事や新しい取り組みはありますか?

無いという事は無いのですが、いつもと同じように開発を進めている生地を、タイミングに合わせて商品化しているに過ぎません。
弊社製品は商品単価としては高額商品になる為、お客様に伝わらなくても私なりに出来るだけ努力する部分は精一杯の努力を常にしているつもりです。
今回もいつもと同じ取り組みの中で挑んでいます。

--- 西田さん個人が今回のコレクションで気に入っている、あるいはデザインを楽しんだのはどの生地でしたか?

デザインやパターンに関しては毎シーズン社内で練り上げるので、多くの事が当たり前ですが生地製作については気に入っている生地を考えると選びにくいです。

思い出に残る生地についても同様で、生地製作に関しては常に制作者とのコミュニケーションが重要であり、ご一緒させて頂く制作者とのやり取りや、その方と相談した内容はそれぞれ違い思い出に残る経験になっているからです。

個人的な思い入れを完全に無視するとすれば、イタリア・Faliero Sarti(ファリエロサルティ)社での生地は残念ながら日本国内では制作不可能な品質と抜け感があり、替えが利かない素晴らしい生地に仕上がっていると思いますし、丹後織物の生地全般は商品単価も含めてDEVOA以外では見られないと主張できる品質に仕上がっていると思います。

--- 日本とイタリアで製作したウールを使った生地について、それぞれの違いや特徴についてお聞かせください。

これは天然繊維全般に言えることですが、ウール織物については厳密に答えるならばイタリア・Faliero Sarti(ファリエロサルティ)社で製作するヴァージンウールと日本国内で製作するウール織物は糸の番手を合わせて同じものを製作したとしても別物です。 もちろん単価の違いがあり一長一短ではありますが糸の品質(糸の細さ)を含めても良い意味でも毎回悩まされることは多くあります。

イタリアでは細かく設計せずに整理の雰囲気を任せた方が上手く行く事が多いですし、国内ではイタリアで高価になる事が多いウォッシャブルウールなどを高品質で生地単価のバランスが良い素材として製作する事が出来ます。

日本製と海外製生地の表情については生地の組織、原料と整理方法が違うので基本的には違いますし、違いが出るように制作しています。特色についてはデザインに合う様に適性を考えてそれぞれ使っています。

今期も国内外でヴァージンウール、シルクなどを使った高品質な素材を開発。

--- 今回のコレクションでは、京都の丹後織物の生地も製作しています。
どのような経緯で製作することになったのでしょうか?

この生地については私がお世話になっている方からのご紹介から製作が始まりました。
兵庫県の丹後織物産地がある機屋さんへは東京から九州へ行ける程の時間がかかりとても遠く感じましたが現場では全てが吹き飛ぶほどの出会いが迎えてくれました。
厳密には2件お時間を頂きご相談させていただいた内の1件で今回の生地を製作しました。
もう1件は来年の海外個展用で制作をお願いする予定です。

--- 具体的にどのような生地を製作されたのでしょうか?

今回の現場ではシルクツィードとシルクジャカードを製作しました。

シルクツィードに関してはDEVOAが初めて東京で展示会をした際に制作した生地を基に雰囲気を変えて制作をお願いしました。
こちらは絹100%・糸色は全て黒色で統一しながらも7種類の糸の形状を変える事により、光の反射率を変えて同じ黒の中に艶消しの糸、光沢がある糸等を混ぜて依頼しました。
想像以上の品質で生地が仕上がり、生地の主張を殺さないようにデザインは極力シンプルにそぎ落とす感覚でデザインしていた様に思います。

ローシルクをに艶消しの糸、光沢がある糸など7種類の糸の用いて制作したシルクツィード。

同じくシルクジャカードも制作しています。

こちらはローシルクに違う色糸(アンゴラ・ナイロン等)を混ぜて複雑な組織で制作しています。
ある程度の頻度で着用しても生地の耐久性があるので経年変化として雰囲気を損なう事が少なく、長く愛用出来る商品になっていると思います。
こちらもシルクツィード同様に生地の雰囲気を邪魔しないように服のデザインは極力シンプルにしています。
大きな特徴はドライタッチで毛羽感がありますが毛玉を心配する事が少なく、制電性が強い事です。

これは弊社の問題ではありますがどちらも生地幅が狭く生地単価がとても高く、商品に対する生地コストは見て見ぬふりをするしかないと思う生地に仕上がりました。
生地の雰囲気はとても良く高品質であり、生地は本心では飛び抜けて高価で販売したいのが本音ではありますがこの様な生地をより多くの方に知っていただきたい想いが強いです。

同じ機屋さんにてストールも製作しています。
こちらはシルク100%ですが全て真綿を使い、天然繊維の素晴らしさを体感できる仕上がりとなっています。
色は経糸を黒、緯糸をチャコールと着用時に立体感が出るように糸段階で染め分けをしております。
シンプルに巻くだけで防寒性とスタイリングの重要な雰囲気のお手伝いが出来ると思います。

ローシルクにアンゴラ・ナイロン等、異なる色糸を使い奥行きのある色合いを表現したシルクジャカード。

---ラミーレーヨンや和紙100%、硫化染のツイルなど、ウールの柔らかい雰囲気とは対照的な、無骨な生地もありました。
これらについてお聞かせください。

ラミーレーヨン生地は尾州産地で製作しました。
秋冬商品に合う様に目付を多く重厚な雰囲気に仕上げてもらいました。
着用の経年変化としては中肉でありながら柔らかくドレープが綺麗な生地に成長できると思います。
着用を重ねる事によって生地の重厚感(ヴィンテージ感)が増す生地だと思います。

重厚な面持ちのラミーレーヨン。粗野な起毛感もポイントに。

---ラミーレーヨンや和紙100%、硫化染のツイルなど、ウールの柔らかい雰囲気とは対照的な、無骨な生地もありました。
これらについてお聞かせください。

和紙デニム生地については12年程お世話になっている機屋さんで製作して頂きました。
和紙デニムについては過去に何度も登場している生地ではありますがバイオ加工の工程等、細かく変更や実験を繰り返しながら製作しました。
いつもと同じように抗菌性と軽さを兼ね備えながら和紙特有の柔らかくなる経年変化を体感できる生地になっています。

硫化染めツイルに関しては日本デニムの産地・児島で制作をお願いしました。
現在、生地で硫化染めできる場所は日本で2箇所ぐらいだと機屋さんが仰っていました。
製品での硫化染めも少ないですが生地段階での硫化染めはもっと少なくなっています。
生地硫化染めの特徴は色落ちが製品染めよりカジュアルになりすぎず、着用者個人の生活特性に合わせてゆっくりと色落ちを楽しめる事です。
商品自体は製品にした後にバイオ加工をかけて初期段階での色落ちを少なくし、製品自体が柔らかくなる様に加工しています。

多様性のある素材使いはアイテムのデザインにも散見される本コレクションの特徴の一つ。

--- 以前の秋冬で「静電気が人体に与えるストレス」に着目して製作したとおっしゃっていた孟宗竹を使用した生地が今回も使われています。
今回の生地にはどのような特徴があるのでしょうか?

もちろん人体に与えるストレスの影響というテーマでの生地製作は進めています。
今回の竹を使った生地は天竺組織で制作しています。
混率は孟宗竹50%・綿50%です。
こちらはこの生地で個人的にシーツを製作しアレルギーテストなど数名の使用経過を踏まえた上でやっと制作に辿り着きました。

初めの糸の制作から考えると実際の生地の完成から商品まで2年以上経過してしまいました。
実際の生地は肌触りがとてもよく、ドラム型の家庭洗濯機で乾燥までかけても風合いを損ねることなく維持していました。

今回はコートの裏地として登場していますが別ブランド H.R 6では、この生地のみで制作した新しいタイプのルームウェアを製作する予定ですので楽しみにお待ちください。

現在、22-23FW用での新しい生地開発もサンプルまで完成していますので次回お披露目が出来ると思います。
こちらも併せてご期待くださいませ。

--- 秋冬コレクションのシルエットやサイズのバランスについては、どのような変化を加えたのでしょうか?

シルエットの大きな変化としては重ね着が出来るようにアームホールを従来より大きくした部分が大きいと思います。
アウター以外もアームホールに関しては大きく変化させていましたので併せてアウターも広げています。
細かいサイズバランスに関しても大きく変化させていますので、カットソーからアウター含めて大きなサイズを着用してルーズフィットを表現せずに 従来のサイズ感通りに着用して頂けるようにしておりますのでサイズ選びにはご注意下さいませ。

※商品自体がルーズフィットに作成しているものもございます。

重ね着が出来るようにアームホール従来より少し大きく設定。

--- ルックのスタイリングについて、秋冬ではどんな提案をされているのでしょうか?

パーソナルなご提案なのですがレイヤードしながらファッションを楽しんで頂ける事を中心に考えました。
特に難しく考えることは無く着用者の丈感(着丈)の強弱を少し考えながら着用するだけで、気軽に大きく雰囲気を変える事が出来ます。
異素材の組み合わせや、同色でも少しの小物使いで間を作ると良い意味で隙が出来て着用者をさりげなく着飾ってくれると思います。

--今回ルックに女性モデルを起用されています。これにはどんな意図があるのでしょうか?

国内店舗では滅多に無いと思いますが海外店舗では女性のお客様が購入される機会もあると報告を受けていました。
実際に身頃のパターンバランスも男性特有のサイズ取りから若干変更している商品もありますので、ある程度の身長があれば女性でもスタイル良く着用できる事を私自身も再発見しました。
そういった経緯もあり今回は実験的に女性でもメンズサイズを着用して撮影させて頂きました。
海外店舗からの反応はとても良かったです。


※DEVOA公式サイトで21-22AWのルックブックをご覧いただけます。

今回のルックでは女性モデルも起用。実験的にメンズサイズを着用して撮影している。

次ページは各アイテムについての解説です。

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