DEVOA インタビュー
2020春夏コレクションについて
2019年12月14日

作り手の思想にフォーカスを当て、クリエーションの裏側にせまるデザイナーインタビュー企画。

今回はDEVOAの2020SSコレクションについて。

製作の過程や創作の裏話などについてデザイナー、西田氏にお話を伺いました。

西田 大介

スポーツインストラクターを経て2005年、ブランド創設。

自身の経験と知識に基づいたパターンとハイクオリティな物作りが国内外のコアなファッションフリークからの支持を集めている。

 


 

ANNASTESIA NAGOYAを拠点に販売員として店頭に立つ傍ら、メディア編集者として活動している。

舞台や広告カメラマンの経験を経て2019年3月に入社した専属フォトグラファー。

 


 

"素材の軽さや素材感の表現については、なかなかできないようなことを意識して表現しました。"

---前回のインタビューではご協力いただきありがとうございました。おかげさまでお客様からもご好評をいただきました。

こちらこそありがとうございます。

私の方にもインタビューを見たという声をいただいたり、知人から連絡があり、旧友を温める機会になりましたし、自分の創作の過程を振り返ることでまた新しい発見ができたりと、私にとってもいい経験となりました。

---前回のインタビューをご覧になられたお客様からブランド名についてご質問をいただきました。
ブランド名「DEVOA」の由来を教えていただけますか?

DEVOAと言うブランド名に関してですが、DEVOTA(信念/想い)とDEVOTION(祈り/献身/信念)2つの言葉を繋げた造語です。

考えの発端は制作する側(生地工場・縫製工場全て)とそれを受け取る側(店舗バイヤー・お客様)への想いを繋ぐと言う発想の元に考えました。

人間は唯一想いを繋げることができる生物だと思うので人が創る考えの大切さ、思いやりを共有したいと思い、ブランドネームを決めました。

---なるほど、インタビューでご自身の考えや周囲の方への感謝を述べていらっしゃいましたが、ブランド名にもそういう思いが込められていたんですね。
ご回答ありがとうございます。

2020SSコレクションと西田氏。
今回のコレクションについて語っていただいた。

---では、本題に入らせていただきます。まず、今回の春夏コレクションの概要をお聞かせください。

コレクション製作にあたって、今シーズンも素材の開発から着手しました。

今回もイタリアの生地も多く使っていますが、日本で製作した素材もおよそ50%程あります。

素材の開発はおよそ1年前からスタートさせて、素材の軽さに特化することを意識して制作を始めました。

素材に対する加工、あるいは使っている素材の原料についても、他ではなかなかできないような手法を用いて製作しています。

いわゆる高級素材と呼ばれるものに対しても、新しいアプローチで製作しているので、それが独自の素材感の表現に繋がっていると思います。

それと、これは基本的に春夏コレクションでは常に試行錯誤していることなんですが、軽くてお客様自身が簡単に家庭で洗濯ができる素材作りも意識して制作しています。

自宅で簡単にケアできることや着用時の快適性など、素材に多面的な機能を持たせて、その素材の特性を活かすこと考えながら生地の企画を考えていきました。

素材の軽さや取り扱いの容易さを一つのポイントに製作した春夏コレクション。
ふわりとした軽い着用感、懐かしさを感じる雰囲気の作品が目立つ。

--前回のコレクションと比べると日本の生地の割合が増えていますが理由はどこにありますか?

実は理由は特にありません。

生地の開発はSS/FW関係なく日本と海外で常に並行して開発を続けていて、今回のコレクションではたまたま日本の生地の割合が多かったという、単純な理由です。

天然素材から最新鋭の素材まで、それぞれの生地特性を理解した上で作品を作り上げていく。

素材はテクスチャからカラーの表現まで、それぞれに個性のある表情の生地が並ぶ。

---今回、生地を制作するにあたって特にこだわった点を教えてください。

ファリエロサルティで制作したものに関しては、低温染めの後に製品洗いをかけたような雰囲気の生地のものを選んで制作しました。

オルメテクスで制作したものに関しては、よりテクニカルな部分です。

生地をシュリンクさせ生地に表情を作ったり、4WAYストレッチの高密度ナイロン素材等、それぞれの得意分野で作りました。

日本で制作したものに関しては、リネンやコットンシルクなど、天然素材に対して生地の最終加工を通してどのような生地としてアプローチ出来るかという点に 特にこだわりました。

特にコットンシルクにブラスト加工をかけて表現した空気感は、DEVOA独自の雰囲気を表現できたと自負しています。

今シーズンもっとも目を引いたのが星座をプリントしたこのファブリック。
ファリエロサルティに別注をかけた力作。

機能的な素材はオルメテクスの生地で表現。
こちらはストレッチ性が高く、弱撥水機能がついた高機能素材を使用したジャケット。

国内で生産したコットンシルクのジャケット。
独自の加工で素材の表現にこだわった作品。

--今回のコレクションで新しく取り組んだ試みはありますか?

国内で生地を制作するプロセスに関しては新しい取り組みで製作しています。

既存の加工順序や加工の種類や手順に変更を加えたり、これまで使ったことがない手法を取り入れた特殊加工です。

これは今回難しい加工や加工順番の変更など新しく取り組んで頂いた加工工場様のお力添えがかなり大きいです。

---取り組みを変えるきっかけはどういった点にあったのですか?

これまで生地を製作してきた中で生まれたアイディアや、自分の頭の片隅で描いた思考を試す、実験的な感覚に近いことは毎回やっているのですが、今回もそういったところがきっかけになっています。

毎回成功と失敗の繰り返しの中で発見があって、その発見を次の製作で試しているような感覚です。

そういう意味では、今回もまた素材に対して新しいアプローチができたので、これまで制作したことがない、新しいものが作れたのではないかと思います。

--デザインに関してはどういう考えで製作されましたか?

今回のコレクションで使っている生地が、リラックスしたの雰囲気のものが多かったので、まずトップスに関しては凝り固まったようなものではなく、ナチュラルでシックな洋服の方が生地の落ち感等が合うと考え、デザインは極力シンプルな雰囲気の作品をベースとして製作しています。

パンツに関してもそういった雰囲気に合わせて製作しているので、全体的にシックな雰囲気のコレクションになっていると思います。

ただ、創作の原点は素材の特性を活かすところからスタートさせているので、狙ってこういうコレクションにしたというわけではなく、 あくまでも素材特性に合ったものを考えていった結果という形です。

クラシックな要素が随所に見られた春夏コレクション
こなれた表情と穏やかなカラー表現が際立っていた。

-----過去の作品の雰囲気のものに近いデザインのアイテムも散見されます。 そのあたりは意識して制作されていますか?

今シーズンは過去に制作したものを意識してデザインしたものもいくつかあります。

例えばレザージャケットは、これまでに制作してきたDEVOAの特徴や雰囲気を意識して、そこに新しいテクニックや素材を落とし込んでいます。

ウエストのシェイプの感じやサイズバランスは他のパターンよりもアナトミックなパターンバランスになっていると思います。

コレクション全体が緩くシックになりすぎないように少しDEVOA独自の癖を出すように制作しました。

--カラー展開の多さも目に付いた印象ですが、意識されて制作されましたか?

それぞれの素材で、独自の表現ができる色を作った結果こういう展開になったというので、特に意識して使っている、ということではないです。

色表現のテストとして生地は同じですが染色加工工程を分けている生地もあります。とても勉強になった事が多かったです。

複数色で展開されるアイテムは、質感や色味の差異で独自色を出している。

--独特な色合いの表現も目につきましたが、表現の仕方は?

色表現についての一例を挙げると、3ピースで展開しているストライプの生地は、実は特殊な染色方法で染色しています。

ブラックとネイビーの2色あるのですが、ネイビーの方が特殊な方法で色を表現しているので、実は最初に作ったのはネイビーなんです。

その後にスタンダードな色としてブラックを作ったという形になります。

表に出ない些細なところかもしれないですが、わずかな色の違いにもこだわって製作しました。特に加工後に色の濃度、光の反射率が変わり見る色が濃くなったり薄くなったりするので沢山のテストが必要でした。

今シーズンは明るいカラーのシャツやカットソーも散見された。

--パンツでは太めのシルエットが目立ちました。

今回のコレクションではパンツの形のバリエーションが多いのですが、実はパンツのベースとなる形自体はこれまでと大きく変えておらず、ディテールに関してもポケットの大きさや角度以外は大きく変更してないです。

パンツのデザインとしてこれまでDEVOAではあまりワイドシルエットのアイテムを多くは作ってきてなかったので、パラシュートパンツだったりバギーパンツ等はDEVOAとしては新鮮味があると思います。

バリエーション豊富な今期のパンツの中で、異質な存在感を放つワイドパンツ。
複数の型で展開されている注目のアイテム。

--シャツに使っている星座柄はインパクトがありました。

この柄は元々ファリエロサルティ社のストールで使うために開発された柄の生地で、その柄を私の方が生地の方に使わせていただけるようにお願いして製作していただきました。

原型からは色味の変更が多くグリーングレーをベースに製作してもらって、なおかつ低温染めでプリントにシェードをかけています。

柄もカラーもファリエロサルティに別注をかけて作ってもらった生地です。

柄の大きさを大きく取り生地を裁断する際に柄合わせなどをせず1点1点柄が違うように裁断を指示していますので出来上がった商品の柄は全て異なるようになっている点も楽しんでいただけると思います。

シャツで使用されているファブリック。
退廃的で強さを感じる一方、どこか繊細さも孕んだ異なる世界観が交差している。

--ここ数シーズン含めて、ストライプの生地がよく使われている印象です。

特にストライプを多く意識的に作っているという事は考えていません。

生地はそれぞれ別々に製作をスタートさせていて、比較的早く完成したものもあれば、長い期間をかけて制作したものもあります。

生地の開発に関しては同時にスタートしたものもあれば、時期が違うものもあるので、たまたま完成の時期が重なった事が要因です。

様々なストライプ柄はメリハリを効かせたものから、ヒッコリー調の細かいものまで、生地を含めて多種多様な構成。

--個人的にはこの生地(CANAPA STRIPE)が気になりました。

実はこれは生地の設計上は元々裏面が表なんです。

設計された生地を見たときに、この太い糸がステッチの様になっている裏面の方が美しいと思ったのであえて裏面を使っています。

本来の設計を裏返して裏側を表として生地の整理も行っています。

--色の染まり方も独特ですね。

ファリエロサルティ独自の低温染による色むらと太い糸と、生地の凹凸のバランスが個人的には気に入っており他の設計や素材では難しい表情が出来ていると感じています。

カナパという素材自体は日本では法律上、見る事がない原料でもありますから。

--カナパは確か麻の一種でしたね。

カナパは大麻ですね。

麻にはジュート、ラミー、リネンとありますが、この生地で使っているカナパは、植物の節がないのと、太くて比較的均一な糸を使っています。

これもイタリア独特の素材だと思います。

特にカナパは生地加工でいろいろな表情が変わることも特徴の一つです。

感覚的に使う面を選んだというカナパの生地。
左が使用している面で、右が裏面。本来は裏表が逆。

ムラっ気のある染め感や素材の凹凸が特徴的。コートやパンツ、キャップなどで展開される。

--シューズでは今回サボを初めて製作していますね。

夏場の軽い履物、特にサンダルは以前から要望の声があったのですが、 サンダルは他のシューズに比べて作りが簡素とはいえ、成靴工場の手法ではどうしても高価なものになるので、 できるだけサンダル感覚に近いような形のもので、なおかつ夏場に素足で気軽に履ける楽なものを、と考えた時に、 これぐらいシンプルでいいんじゃないかという発想の元、製作しました。

----履いた時の土踏まずのフィット感に特徴がありました。

秋冬コレクションの時に木型やインソールに変更を加えた時に土踏まずのフィット感は意識して製作しています。

かかと部分のインソールは成形コルクで製作していて、履き馴染ませる事によって4mmほど沈むようになっています。

歩行時に踵の着地点を固定させることと、土踏まずのアーチの補強の目的でハーフインソールを中に入れ込んでいます。

最初は少しきつく感じられるかもしれないですが、レザーやゴア部分の馴染みがいいので履いていくと徐々に足馴染みは良くなると考え設計して作っています。

今回初製作となる夏にぴったりのサボ。軽い見た目とフィット感は一見の価値あり。カラー展開も豊富。

--(サンプルを履きながら)確かに最初に履いた時と比べるとすでに馴染んできている感じがしますね。

歩いている時に踵が浮かないようにフィッテングを考えて製作していますし、踵がない靴ですがそんなに簡単に脱げないと思うので、サイズとしては少しホールド感がある感じで履いていただいた方が馴染んできたときに気持ち良く履いてもらえると思います。

こちらはSAND BROWN。今までになかったかすれた色合いが特徴的だ。

--iolomとのダブルネームのアクセサリーについて製作されたお聞かせください。

DEVOA自体は毎シーズンアクセサリーを作るようなブランドではないのですが

スタイリングに馴染むものが作れるタイミングや発想が湧いた際は製作に動く事が大きいです。iolom坂本氏自身とはコンタクトを取る事は多いので彼自身の作成している内容などを見ながら相談して制作していただきました。

デザインはDEVOAで指示させていただき、ネックレス本体制作をiolom坂本氏で制作、ペンダントカバーを私が手縫いで制作しました。各々が担当するパートは互いに全てハンドメイドで製作しています。

iolomでも違うタイプのルーペなど作っていますのでそちらも合わせて見てください。

お互いハンドメイドで製作したルーペネックレス。真鍮とシルバーの2つが展開される。

--今回のコレクションのパターンについて教えていただきたいと思います。

今回製作した作品のパターンに関しては、デザインとしてはいわゆる引き算をして製作していったものが多くあります。

生地を見ても構築的に制作するよりシックなデザインにして上質でシックな雰囲気にした方が生地が生きると考えました。

今まではアナトミックなことを前提として、様々な要素を組み合わせながら構築していくことに主眼を置いていましたが、今回のコレクションでは、よりナチュラルで、キレイな立ち姿に見えるようなパターンワークを目指しました。

--これまでやってきたことからシンプルな方向にシフトしたということですか?

今回に関してはシンプルに制作しました。

クリエーションの根幹は自分の製作哲学に沿ったものになっていますが、春夏のシーズンは軽い生地が中心になります。

秋冬で使うような厚みがある生地とは全く表現が変わってくるので、そこを考慮して着用した時に綺麗に見えるような生地分量の設定をしています。

今回のコレクションでは着眼点を変えてパターンを製作。
根本的な考えは変えず、シンプルな方向にシフトさせたという

--同じアイテムで異なるサイズのアイテムを展開している理由についてはいかがですか?

レギュラーとルーズで2種類製作しているアイテムに関しては、単純にお客様が好きな方を選んでいただけたらなと思って製作しています。

サイズを変えて着用する事も勿論あると思うのですが適正サイズに合わせて フィッティングを考え提案している部分が多いので2種類制作したりもしています。

コレクション自体にはタイトなものやルーズな物とそれぞれ制作していますのでお客様の気分に合わせてコーディネートを楽しんでいただけると嬉しいです。

--リラックスしたシルエットで製作されている理由もその辺りにあるんですか?

購入してくださるお客様や取り扱っていただいている海外のショップのバイヤーさんの年齢や着こなしを考えた時に、 大人達が気分を変えて気軽に着れるようなものはどういうものなのかと考えたところが理由の一つです。

時には細身であり、時には抜け感のあるコーディネートなど着こなしに色気が出る事を考えて制作しました。

私自身もブランドとともに年齢を重ねてきたなかでコーディネートの幅を持たせたい事も大きく影響していると思います。

インナーも少しゆとりを持たせていたりするのは、アウターなどのバランスに合わせて、スタイルを全体としてみたときの印象を考慮して設定しています。

--今シーズンはどんなスタイル提案をされていますか?

スタイリングは実際に着用するお客様に自由に楽しんでいただければ、私にとってそれが一番嬉しいことです。

私自身のパーソナルな意見としては、例えば色の合わせ方、特に今回は差し色がダーティイエローやオレンジがあるので、その辺りのカラーを使って楽しんでいただけたらと思います。

ルックのスタイリングを構築する上で意識したのは、ダーティイエローはブラックで、オレンジはブラウンやグレー、あるいはチャコールと合わせていて、全身単体色で固めるというよりは、カラーリングで遊びを持たせるという感覚で見せています。

是非スタイリングの写真でご確認ください。

ルックでは鮮やかな差し色を使ったコーディネートが目立っていた。
オレンジやレッドもニットやカットソーで効果的に差し込まれる。

ダーティイエローも様々な組み合わせで使われる。やりすぎてないと感じさせるのは独特の色表現があってこそ。

--最後に、今シーズンのオススメしたいアイテムはありますか?

アイテムではないのですが、コットンシルクやテンセルの生地は気に入っています。

特にイエローは少しシェードがかかったこのカラーを表現するためにいくつか手順を加えています。

DEVOAでしかできないものが表現できたと自負していますし、特別感があるのではないかと思います。

それとは別に、3ピースで展開しているシルクコットンの生地もお勧めです。

加工のプロセスや組み合わせも特殊な工程を踏んでいるので、独特の色合いや質感を表現できましたし、これもDEVOAでしかできないと自負しているので、そういったアイテムに注目していただきたいと思います。


2020SSコレクションと並行して、DEVOAの新プロジェクト[H.R 6]が来年スタートとなります。

このブランドは、[最小限のデザインと技術を結集し、視覚的、感覚的にも心地よい品質を持った作品の製作]をコンセプトに、 西田氏がこれまでの制作の中で得た経験や知識を活かし、プライベートな空間において、快適でリラックスした時間に併せて一緒にいて気持ちの良い素材、技術が結集された作品を展開していきます。

作品は各専門の技術者とのコラボレーション等で制作。制作場所は日本に限らず、海外の技術者も視野にいれて制作していくとのこと。

[H.R 6]で発表される作品は全てFASCINATEのみの独占販売となります。

こちらについても西田氏に直接解説していただいております。

作品の概要や詳細について、来年のローンチと同時に公開する予定ですので是非そちらも楽しみにお待ちください。

H.R 6